《ゴミ人間、渋谷に出現》

400字小説 公開:2026-1-10 作者:一本吉夫

※西野亮廣作「えんとつ町のプペル」の二次創作です。


渋谷のスクランブル交差点に、ある夜、黒い影が落ちてきた。

ゴミ袋がはじけ、煙の匂いをまとった人間が立ち上がる。プペルだった。

人々はスマホを向け、笑い、動画を撮り、すぐに興味を失った。

「バズらないな」

誰かが言い、群衆は流れていった。

そのとき、歩道橋の下でスケッチブックを抱えた少年が、プペルを見上げた。

名は悠人。学校では「夢語り」とからかわれている。

「ねえ、空って、ほんとは青いんだよね」

少年が言うと、プペルは頷いた。

二人は夜の渋谷を歩いた。ネオンは星を隠し、広告は夢を値札で測る。

それでも悠人は言った。

「見えないだけで、あるって信じたい」

明け方、始発前の屋上で、雲の切れ間から一つだけ星が瞬いた。

プペルの体は、少しずつ光に溶けていく。

「信じたね」

それが最後の言葉だった。

朝、渋谷はいつも通りだった。

ただ一人、悠人だけが、空を見上げて歩いていた。