《未来であなたがすべきこと》

400字小説 公開:2026-1-25 作者:一本吉夫

朝七時、目覚ましは鳴らない。鳴るのは玄関の「ピンポーン」だ。配達ではない。ロボットが今日の“やること”を持ってくる。

「よしお様、本日の任務:失敗してください。成功は禁止です」

白い筒から出てきたのは、わざと折れやすく作られた鉛筆と、無駄に難しい折り紙の設計図。昔は仕事で怒られたのに、今は失敗が希少資源らしい。

公園では、元エース営業の老人がベンチで将棋盤を叩いている。相手はAI。三手目で負けると、周囲が拍手した。

「負け方がうまい! その“くやしさ”、保存していいですか?」

AIは負けた人間の表情を学習し、次の人間を笑わせる。人間は笑われるために、今日も一生懸命に不器用になる。

帰り道、ロボットが言った。

「よしお様、明日の任務:初めて会う人に、ひとつだけ秘密をください」

仕事が消えた世界で、秘密だけが増えていった。人は働かなくなって、なぜか少しだけ生き物らしく忙しい。